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草木は蒼々たり、雲気は騰々たり。

雷が運営するサイト・蒼雲草のブログページ。日々のことを書き綴る予定。あくまで予定。

ユニコーンと女装

「ユニコーンは処女に従順だが、男でも、女装して香水をつかえば手懐けられる」というネタ。日本限定の与太話かもしれない、と英語文献に類話がないか調べていたら、とある子供向けの演劇の脚本に、登場人物が、ユニコーンの捕まえ方が本に記載されているのを見つける場面があった。

 

>パプリカ: ここよ。こう書いてある。「旅人はインド、アラビア、モロッコを探してきた。男装した者は近づくことができない。男は若い娘に変装し、服に香水をつけ、花冠をかぶり、木の下に座って愛の歌をうたわなければならない。香りに引寄せられたユニコーンは、乙女の膝に頭をのせて眠りに落ちる」

(中略)

>ピッター: (本を閉じながら)パプリカ、ユニコーンを捕まえるために、ドレスを貸してくれるかい?

>パプリカ: ここに乙女がいるのに、なぜ変装するの? わたしも一緒に森に行くわ。

(McCallum, 1965, p.10)

 

直前にあるユニコーンの説明は「馬の胴、羚羊の後ろ足、獅子の尾。額にねじれた一本の角」「角の根元は白、中ほどは黒、先端は赤。体は白、頭は赤、目は青」と、古い伝承を踏まえている。女装云々も元ネタがありそうだ、と探してみたら、もっと古い資料を見つけることができた。

 

>インド、アラビア、モロッコに生息するというこの動物を求めて、人々は長い巡礼の旅に出たという。男は、男装したままでは近づくことができない。若い娘の服を着て変装し、服に香水をつけ、そしてユニコーンの棲み処に横たわらなければならない。狩人の衣装の香りにさそわれ、甘い匂いに引寄せられたユニコーンは、乙女と思われる者の膝に頭をのせて眠りに落ちる。

(Holder, 1912)

細部は異なるけど、脚本の記述と、おおむね一致する。

 

「ユニコーンは処女に従順だが、男でも、女装して香水をつかえば手懐けられる」というネタは、英語の活字本で、とりあえず1912年までさかのぼることができた。同じ話が子供向けの百科事典『The Book of Knowledge』にも掲載されているから、それなりに由緒ある説話なのだろうと思う。

 

McCallum, P.The Uniform Unicorn(Denver, Colorado, Pioneer Drama Service, 1965)

Holder, C. F.Queer Steeds(Boys' and Girls' Bookshelf Vol.16 Part 2, New York, University Society, 1912)

Thompson, H. & Mee, A.(Eds.)The Book of Knowledge Vol.1(New York, Grolier Society, 1926)

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